カラフルな色彩とオリジナリティ溢れるテキスタイルが魅力のブランドmannine〈マンナイン〉。2025年4月16日(水)より開催される同ブランドのポップアップでは松屋銀座開店100周年を記念した特別コラボ商品が登場。ポップアップ期間中だけの限定販売となるオリジナル柄の商品に込められた想いや制作背景を、mannine〈マンナイン〉デザイナー・岸本万里(きしもとまんり)さんと松屋銀座婦人雑貨バイヤー・伊勢田京平(いせだきょうへい)さんの2人に伺いました。

お話をお伺いしたのは

mannine
〈マンナイン〉
デザイナー

岸本万里さん

PROFILE

横浜出身のテキスタイルデザイナー。“プリントを身につけることを楽しんでもらいたい”というコンセプトのもと、着心地の良い服を展開するファッションブランド、mannine〈マンナイン〉を手掛ける。遊び心のあるキュートな世界観と個性的なテキスタイル、そして物語性のあるキャラクターたちで多くの人を魅了し、松屋の顧客にもファンが多い。

Instagram:@mannine.official

インスピレーション源は、松屋の社史と館内の雰囲気

ーーー松屋銀座でしか買えない限定商品としてmannine〈マンナイン〉との特別コラボレーションが販売されますね。どのような経緯で今回のコラボが実現したのでしょうか?

伊勢田さん「今回のコラボ制作が決定した際にまず頭に浮かんだのがmannine〈マンナイン〉さんでした。かわいくて心躍る魅力的なテキスタイルに加え、“日常を明るく彩る”というブランドの世界観が、百貨店の役割ともリンクしていて。岸本さんとは長年の信頼関係もあり、まっさきにお声掛けさせていただきました」

岸本さん「伊勢田さんから100周年が近いというお話を伺ったのはちょうど1年くらい前でしょうか。そこから改めて正式にお声掛けいただいて、オリジナルのテキスタイルを1カ月ほどかけて制作しました。制作中も楽しかったですね」

ーーー今回のコラボで使用されたテキスタイルには、mannine〈マンナイン〉のキャラクターが松屋銀座でショッピングを楽しむ様子がデザインされているんですね。

岸本さん「松屋さんは格式が高く、銀座というロケーションもあって少し緊張してしまうものの、お店の方々は親切で温かく素敵な人ばかり。そういった和やかな空気感が松屋さんのイメージとして当初から頭の中にありました。

また、中央にある吹き抜けの空間、『スペース・オブ・ギンザ(SOG)』の印象も強く、下から見上げた時の天井の高さやエスカレーターで昇降する際の雰囲気が好きだったこともあって、キャラクターがエスカレーターに乗ってお買い物を楽しむ様子をイメージしてデザインしました」

ーーーエスカレーターをモチーフに起用したのは岸本さんのアイデアなんですね。

岸本さん「そうですね。打ち合わせで松屋さんの創業150年社史を資料として拝見させていただいたのですが、昔の社屋や売り場の写真から感じる、松屋さんの長い歴史とその中にある今っぽさのバランスが素敵だなと。エスカレーターはその中でも印象的で、“ずっと続いてきたもの”であり、“未来へ続いていく”感じもして、デザインの中心に据えるのがいいなと思ったんです」

伊勢田さん「松屋の社章である松鶴マークを使う案や鶴が飛んでいる案などさまざまな案が上がったのですが、岸本さんからの提案で1956年当時『空中エスカレーター』とも呼ばれ、松屋銀座の名物でもあったエスカレーター(通称スカイリボン)をモチーフにすることになりました。今回のオリジナル柄は、一見するとリボンや帯のようにも見えますが、よく見ると実はエスカレーターが隠れているという遊びが心あるデザインになっています」

ーーー本当ですね。スカイリボンの名のごとく、リボンがたなびく柄にも見えます。

岸本さん「エスカレーターを交差させた案や、エスカレーターの段を細かく描き込んだ案もあったんですよ。でもガチャガチャした印象にならないよう、バランスとディテールを細かに調整しました。

最終的にはエスカレーターをあまり前面に押し出さずに、よく見たら“あ、それエスカレーターなんだ”と気づく程度に。キャラクターたちの背景に溶け込む幾何学的な柄にも見えるデザインに仕上げました。

やはりいちばん見せたいのはキャラクターが買い物を楽しんでいる様子やその賑わいなので、柄の意図は説明をして伝わるくらいがいいかなと」

100周年を盛り上げる表情豊かなキャラクターと細かな描き込み

ーーー具体的にはどのように制作されているのでしょう?

岸本さん「手描きならではの温かみや独特なタッチが、mannine〈マンナイン〉のテキスタイルの特徴のひとつです。そうした表情を残したいので、まずはキャラクターなどのすべてのモチーフを個別に紙に手描きします。

今回描いた松屋さんの名物催事『百傘会(ひゃくさんかい)』をイメージした傘のポスターや100周年ショッパーなどの松屋モチーフは線がハッキリした黒いマジックのようなもの、各キャラクターはコピックなどの細いペンを使用しています。

描いたものは、スキャンしパソコンに取り込み、着色して各モチーフの配置や大小のバランスなどを調整します。

テキスタイルは上下左右偏りなくバランスの取れた配置に仕上げた柄をリピートさせなければいけないので、柄を仕上げていく作業はパソコンで行います」

ーーー細部にまでこだわって描かれたキャラクターやモチーフは見ているだけで楽しい気分になりますね。

岸本さん「ありがとうございます。mannine〈マンナイン〉にはかわいい動物モチーフがいろいろ登場しますが、今回はみんなそれぞれが自由に買い物を楽しんでいる姿を描きたいと考えました。

なので、うさぎ、カエル、猫、パンダなど賑やかな面々になっています。記念すべき100周年ですし、多様なキャラクターがいることでお祭り感も出ていいかなと。実際に松屋さんには海外からのお客様も多く来店されていますしね」

伊勢田さん「松屋でのショッピングの様子を本当にうまくデザインに落とし込んでいただいたと思います。松屋銀座を思わせるモチーフもしっかり潜ませつつ、いい意味で松屋松屋しすぎていない。岸本さんの手腕によって、松屋銀座開店100周年というテーマをさりげなく、そしてとてもかわいく表現されていて、すごく素敵な仕上がりになっていると感じます」

岸本さん「たしかに今回は『100周年』という記念の柄なんですけど、日常的に楽しんでいただきたいという想いも込めて制作しています。モチーフの面白さや特別感も大切ですが、特別な日の一着というよりはいつでも身に着けられるような感覚でデザインをしたので、お洋服はもちろんポーチや傘などお好きなアイテムで楽しんでいただければと思います」

松屋とも共通するデザインへの想い

ーーー日常的に楽しんでいただきたいというのはmannine〈マンナイン〉のブランドコンセプトとも通じているのでしょうか。

岸本さん「はい、私がmannine〈マンナイン〉を始めた理由のひとつは、日常生活の中でプリントの持つ力や魅力を強く感じた経験があるからなんです。天気の悪い日が多く、寒くてグレーでどんよりした気候の国で暮らしていた頃、鮮やかな色や柄を見るだけで気持ちが明るくなることが多くて。扉を開けた先に赤い壁があったり、キレイな絵が飾ってあったり、コートの下のワンピースが鮮やかな柄だったり……それだけで少し気分が上がるんです。

人をそんな気持ちにさせてくれる色やプリントの力に惹かれてこのブランドを立ち上げたんです。

実は先日、以前mannine〈マンナイン〉のワンピースを初デートに着て行かれたお客様が、その後ご結婚されて、お子さんも授かったというご報告に、会いに来てくださったんです。初デートでそのワンピースが会話のきっかけになったそうで、“お礼を直接伝えたくて”と。相手の評価を気にする場面で選んでくださったことが、本当に嬉しくて。こんなふうに、日常の大切な瞬間にブランドとして寄り添えたことをとてもありがたく思いました」

伊勢田さん「mannine〈マンナイン〉さんのアイテムはどれも個性的なプリントですが、実は形自体はシンプルで実用的なんです。日常に寄り添いながら、デザインを通してお客様のライフスタイルを豊かにしている点は、“お客様にドキドキやワクワクを届けたい”という百貨店としての使命とも重なります。

100周年という一生に一度の特別な節目に、そんな世界観とともにお客様の“新しい日常”へつながるようなテキスタイルを届けられることがとても嬉しいですね」

岸本さん「松屋さんは一顧客としても大好きなお店。そんな松屋さんの歴史に関われたことを光栄に思っています。今回のコラボをきっかけに、新しくお客様とのつながりが生まれ、そこから楽しい世界が広がればいいなと思います」

mannine〈マンナイン〉ポップアップショップ

松屋銀座3階 
婦人雑貨イベントスペース②

会期/2025年4月16日(水)-22日(火)

PHOTO/NORIKO YONEYAMA TEXT/MAIKO TERUYA