今回ご登場いただいたのは、100周年を迎える松屋銀座でデザインとファッションの最前線に⽴つ同期バイヤー2人、7階のデザインコレクションを担当する蓑輪正太郎さんと、3階の婦⼈雑貨を担当する伊勢田京平さん。“そもそも百貨店バイヤーの仕事とは?”にはじまり、松屋銀座らしい価値ある⼀品をセレクトするためのこだわりや、ご本人が⾃腹買いしたい「イチ推し商品」まで、同期の関係性だからこそ語り合える、ストーリーが詰まった対談をお届けします。
自分で探して見つけた商品が売れると、やっぱりうれしい

――まずは、“百貨店のバイヤー”というお仕事がどのようなものなのかを教えてください。
蓑輪さん:担当する部署で違いがあって、百貨店が運営している売場を担当するバイヤーと、百貨店に入っているブランドショップの運営を担当するバイヤーがいるんですね。後者のバイヤーは、バイイングはしないんですけど、「このタイミングで、こういう新作の商品を手配してもらいたい」ということを、ショップの営業さんと詰めたりして、商品供給のいろんなタイミングを調整しています。
伊勢田さん:僕は前者の売場を担当するバイヤーです。その時期にお客様が欲しい商品を選び、売場の各区画に陳列するというのが主な仕事。メーカーが割り当てられている枠もあれば、単品を選んでつくる枠もあって、自分たちでお取引先と話して並べる商品を決めていきます。
蓑輪さん:僕も大きく言えば伊勢田と一緒です。自分が担当する売場を持っていて、そこで販売する商品を探して、仕入れるバイヤーですね。例えば婦人服で言うと、「このブランドの、このシリーズのワンピースの、この柄の、このサイズを何枚仕入れる」というのが、売場を持っている担当バイヤーの仕事です。

――バイヤーのお仕事で、やりがいや楽しさを感じているところを聞かせてください。
伊勢田さん:僕は単純に、仕入れた商品が売れたら、すごくうれしいなって思います。あと最近は、チーム単位で成果を出すことが楽しいなって思うようになりました。バイヤーって基本的に個人プレーなんですけど、後輩を育てなきゃいけないところもあるので。教えながら一緒にやっていってどんどんできるようになると、うれしいですね。

蓑輪さん:僕は、自分で汗をかいて見つけたもの、もしくは出会ったメーカーさんや作家さんのものが店頭に並ぶとうれしいし、お客様に見てもらえるのもうれしいし、それが売上につながったら“三方よし”じゃないですか。充実感がある“楽しさ”ですかね。
――お2人それぞれがバイヤーのお仕事をする中で、マイルールにしていることは?
蓑輪さん:可能な限り自分の目で見て、手で触って、自分で使って、仕入れているところかな。今はいくらでもネットで情報が手に入りますけど、やっぱり実際に見たり触ったりすることで説得力って出るし、それがお客様に伝わると思うんですね。売場のスタッフに対しても、「なんでこれがいいのか」とか「なんでこれを仕入れたのか」という理由の言語化が必要です。
あとは、人生をかけてものづくりをしている作家さんにお声掛けをするときに、「あなたの作品を使わせてもらっていて、素敵だなって思っていまして。ぜひ松屋銀座で取り扱わせていただけませんか?」って伝えられるのが、うれしくないですか?
伊勢田:うれしい!
蓑輪:僕の担当がそういうことができるジャンルだから、ジャンル得ですね。婦人服や婦人雑貨だったら、自分で使ったりができないから。
伊勢田さん:僕の場合、バイイングする機会がそんなになくて、区画の中にメーカーさんを入れて運用する“編集”が主な仕事なんですよ。お取引先の持っている商品をこちらの意向に合わせてセレクトすることが多い。だからお客様のお悩みを解決することが売上につながると僕は思っています。
わかりやすいところだと、“夏が暑くて長い”なら、どうアプローチするのかを考える。お客様は何か求めているのか、とか、“こういうときに、こういう商品があったらいいんじゃないか”という仮説を立てて、商品を探し回るイメージですね。マイルールというか、いつもそんな感じでやっています。
婦人雑貨の売場は、季節や気候、オケージョン、そういうものに左右されるので、お客様のニーズに応えながら、プラスアルファの提案ができればいいなって思います。

エコバッグ3,300円 ハンカチ2,200円


(小)39,600円 (大)58,300円

1,430円
幾多の商品を見てきた目利きの2人がイチ押しする商品とは?
――それぞれの売場から、自腹買いしたいと思うイチ押し商品を教えてください。
伊勢田さん:もう自分で買って使っているんですけど、<マッキントッシュ フィロソフィー>の「バーブレラ」という超軽量折り畳み傘です。売場では10年以上も取り扱っている商品で、細くてカバンの中にスッと入れられるんです。
蓑輪さん:(持ってみて)あ、軽い!
伊勢田さん:このグリーンのタイプは新作で、ワンタッチ式なんです。今までのワンタッチ式の傘って、重かったんですよ。でもこれはめちゃくちゃ軽くて、びっくりしました。サイズは55㎝で、重さは約170gくらい。これまでの折りたたみ傘を知っている身からすると、“ワンタッチ傘でここまで軽量のタイプができたか!”って本当に感動しましたね。色は、無地のタイプだと10色のバリエーションがあります。僕はずっと折り畳みじゃないタイプを修理しながら使っていたんですけど、このタイプが出たときに黒を買いました。

蓑輪さん:僕のイチ押しは、<Playforever(プレイフォーエバー)>という、クラシックカーをモチーフとしたイギリスのデザイントイです。これは、日本デザインコミッティーのメンバーであるプロダクトデザイナーの深澤直人さんの推薦なんですよ。ほかにもいろいろな色と形があって、僕がこのワンちゃんのシリーズも追加しました。
伊勢田さん:これはおしゃれだね、ほしいな!
蓑輪さん:インテリアとかおもちゃの部類なのだけど、作りがすごくきれいで。まったくストレスなく見らいられるし、書斎に置いても違和感がない。むしろセンスがあるように見える佇まいだなって思うんですよね。
伊勢田さん:このクオリティでこの値段は良心的だと思う。
蓑輪さん:そうでしょ?入荷したらすぐに売れちゃうくらい大人気。


蓑輪さん:もうひとつ持ってきたので、紹介してもいいですか。これは、ペンスタンドで<LIFEWORKPRODUCTS>のものです。
伊勢田さん:テープがちょうど収まるんだね。これは、かっこいい!
蓑輪さん:円柱2個で構成されている、かなりミニマムなデザインで、余計な要素がないんですよね。そして、例えば、長い定規や重いハサミが入っても、すごく安定感がある。それって必要最小限の要素で、優れた設計がされているってことなんですよ。使う人の事を良く考えられている、いいデザインなんですね。

変化が早い世の中で、常に“新しい何か”をお客様に提供したい
――お2人にとって、松屋銀座はどんな場所でしょうか。
蓑輪さん:人生、に近いかもしれない。23歳まで学生をやってきて、そこから社会人として10年。ゼロから積み上げてきたことで、今の自分ができあがっているんですよ。お互いに最前線でバイヤーをやっている責任も含めて言うと、やっぱりこの10年は大きい。人間形成的な意味でも、松屋銀座で働くことは“人生”なんじゃないかなと思います。
伊勢田さん:素晴らしいなぁ! 僕はもう日々を楽しく過ごしたい人なんで。僕が松屋銀座の採用試験を受けるときに「根本は、人を喜ばせたい。みんなで楽しめる場を作ることが好き」という話をしたんですよ。まずは接客を通して、いつかはモノを通して、お客様を喜ばせるような仕事ができたらいいなと思っていたんですけど、今それができているのがありがたいですね。松屋銀座は、自分のフィルターを通して人を喜ばせることができる空間だなって捉えています。


――最後に、これからどんな商品や体験をお客様に届けたいですか?
伊勢田さん:世の中がどんどん変わっていくじゃないですか。その中で、“お客様が困っていることは何なのか”を常に察知して、それに見合う適切な商品を探してお届けしたいなって思っています。
蓑輪さん:松屋銀座は、バイヤーないし社員個人の意思が売場に反映しやすい環境下にあるので、そういった意味で、ほかの百貨店さんにはない、新しい発見を届けたいですね。特にリビングは、デザインのことや、「手仕事直売所」といったクラフトも長らくやっていますし、クラフトとデザインと北欧は半世紀近くやっていて、歴史がある。そこを横断的に、行ったり来たり、時には重ね合わせたり、有機的につなげている、それが魅力ですね。松屋銀座独自のフィルターや編集の妙で、何か新しいことがお客様に伝わるといいかなって思います。それが「松屋体験」ですね。

うらがわ 編集後記
伊勢田さんと蓑輪さん、扱っている商品のジャンルは違っても、“いいものを見つけて、お客様へ届けたい”というバイヤーとしての想いは同じ。一つひとつの商品に対する愛情やセレクトのこだわり、アンテナの張り方などを伺って、松屋銀座の売場がたくさんのストーリーによって構成されていることをあらためて感じました。2015年入社、11年目の同期ということで、プライベートでも親交がある2人。取材や撮影の合間に仲良く雑談していたのも印象的でした。
PHOTO/AYUMI OOSAKI TEXT/AKIKO ICHIKAWA
















