松屋銀座3階にあるセレクトショップ「リタズダイアリー」では、これまでさまざまなブランドとのコラボレーション企画を行ってきました。100周年となる今回は、「les Briqu’a* braque(レ・ブリカ・ブラック)」に別注したスペシャルなコートを発売。「les Briqu’a* braque」のデザイナー・山瀬公子さんにご登場いただき、「リタズダイアリー」との関係性から商品に込めた想い、ファッション哲学まで、たっぷりとお話を伺いました。
「リタズダイアリー」とは
松屋銀座3階にある、国内外の個性豊かなファッションブランドを取り扱うセレクトショップ。一人の女性「リタ」のクローゼットをイメージした空間には、洋服から雑貨まで、フェミニンでありながら洗練されたアイテムが並び、幅広く楽しめる。

お話をお伺いしたのは
les Briqu’a* braque
デザイナー 山瀬公子さん
1976年から15年間アメリカで活動。帰国後、1997年にリメイクを得意とするブランド「les Briqu’a* braque(レ・ブリカ・ブラック)」を立ち上げ、2001年にクチュールライン「MATRIOCHKA(マトリョーシカ)」をスタート。2020年、東京・青山にアトリエ兼ショップ「Casa Yama」をオープンし、現在は両ブランドのデザイナーとしてファッションの可能性を広げる活動を行っている。
山瀬さんのファッション哲学から生まれた「les Briqu’a* braque」の世界観

――「les Briqu’a* braque」は、どのような経緯で立ち上げられたのでしょうか?
「私は元々古着が好きで、古着屋もやっていたので、ブランニューなものを着るよりも、馴染んだものが好きなんですね。1997年当時は古着の在庫をいろいろ持っていて、スカーフもたくさんあったので、当時のスタッフと『何か作りたいね』って、リメイクしてスカートやバッグを作り始めました。私は縫製を勉強してきていないので、逆に“こういうデザインにしたらかわいいじゃん!”って大胆な発想ができた。そうやってスタートしたブランドです」
――ブランドのコンセプトを教えてください。
「コンセプトは、“女性らしく着られるお洋服”ですね。今はユニセックスなファッションがたくさん出ていますけど、私は1950年~1960年代の“ファッション黎明期”といわれる時代の大人を見て影響を受けてきたんです。だから、現代に通じる女性らしいエレガントなお洋服が好きなんです。そういうものをどこかに表現したくて、ちょっとした肩のラインやシルエットなどにエレガントなデザインを取り入れています。
そこに無味乾燥と相対するものや、不変的なもの、超ハイモードなもの、そういったものを少しずつミックスするスタイルを作っているつもりですね。
私の根本がへそ曲がりだから(笑)、人と一緒のスタイルになるのがイヤで、『les Briqu’a* braque』はスタート当初からずっと“ニッチな隙間産業”と言われているから、とことん隙間産業で行こうと思っているんです(笑)」




――ブランド名「les Briqu’a* braque」の由来は?
「ブランドの立ち上げを一緒にやったスタッフの女の子がフランス語の『bric-à-brac(ブリカブラック)』を提案してくれたのがきっかけなんんです。たまたま私の妹の夫がフランス人だったので聞いたら、“ガラクタの寄せ集め”とか“ジャンク”という意味があると教えてくれて。『あれもこれも何でも好きで、整理がつかない私にぴったりじゃん!』と思いました(笑)。で、それで、元の bric-à-brac をそのまま使うんじゃなくて、オリジナルティを出すために、あえてちょっとスペルを崩して“les Briqu’a* braque”という造語にしました」


“その人らしいおしゃれ”を楽しめるのが「リタズダイアリー」の魅力


――山瀬さんは、「リタズダイアリー」が立ち上がった当初から関わっていらっしゃるんですよね。
「今の松屋銀座の店長・石脇さんがリタズダイアリーの立ち上げメンバーで、初代のバイヤーだったんです。彼女と共通の知人の繋がりがあって、そこから始まりました。
『おしゃれが好きで美的センスのあるリタちゃんが、好きなワードローブを集めたクローゼット』という石脇さんのコンセプトを聞いて、私も小さい頃から着せかえ人形が好きだったので共感して、協力させていただくことになりました」

――松屋銀座「リタズダイアリー」の魅力はどんなところにあると思いますか?
「お母さんと娘さんがいらして、『あら、これいいわね』っていう会話が生まれるようなお洋服を置いているイメージですね。彩りをしっかりと作っていらっしゃって、“流行”とか“今どき”とは違った時間が流れた売り場だと思います。
このブランドを着ているからおしゃれ、ではなく、その人らしく似合っているものを着ている人のほうが素敵だと思うので、『リタズダイアリー』でそういうお客様に選んでいただくことはすごく誇らしいです。
『リタズダイアリー』も長く続いてほしいですし、松屋銀座さんは100周年といわず、これからも愛される百貨店でいてほしいですね。私も体が元気なうちはがんばって関わっていくつもりです」
――「リタズダイアリー」の別注企画をデザインする際に意識していることは?
「ちょっとした手工芸的なところが『リタ』のお客様のお好みかなと思っているので、普遍的な形のアイテムにも手を加えて、差を付けることを意識しています。それを私は『松屋好み』と呼んでいて、自分のブランドとベースは同じだけど、ちょっと違う感じですね。
リタズダイアリーにいらっしゃるお客様はおしゃれが好きな方が多いので、“お洋服が好きで、ある程度のものは持っているけど、これはほかと違うわね”と思ってもらえるものを、ということを常に考えます。大量生産ではない、特別なものが欲しい方に手に取ってもらうことが基本なので」
チェックの生地にアップリケをあしらったスペシャルなコートが完成
――今回の別注コートの制作はどのように進んでいったのでしょうか?
「私がマドラスチェックの麻か麻混のコートを作ろうと思っていたところに、リタズダイアリーのバイヤーさんから、麻のコートというリクエストがあったんです。うちにたくさんのアップリケの在庫があったので、『マドラスチェックにあえてアップリケを付けるとかわいいね!』というアイデアからスタートしました」






――デザインのこだわりを教えてください。
「コートの形は、かなりオーセンティックなステンカラーのデザインにしています。お袖はやや長めに作っているので、ロールアップしてジャケットみたいに着ることもできますよ。ボタンを全部閉めて、ベルトをして、ワンピースみたいに着てくださるのもアリですね。
アップリケは、オリジナルで作って、ずっと持っているものなんです。お花のほうは、たまたま見つけた造花を写真に撮って、アップリケにしました。もうひとつのアップリケは、“どんぶり柄”って呼んでいるんですけど(笑)、私がイラストを描いたオリジナルのテキスタイルから取りました。どちらもコートにぴったり合いますよね」

――このコートをどういうふうに着こなすといいでしょうか。
「私、“こういうお洋服を着る人はこういう人”とカテゴライズしないようにしているんです。だから、“私は私でこういうふうに着ます”って自由に着てほしいですね。もちろん、無地のものを合わせてシンプルにスタイリングしてもいいし、あえて中にボーダーを着て、ストライプも着て、水玉も組ませちゃうのもいい。コートはひとつのモチーフだから、おしゃれの法則に縛られないスタイルにチャレンジしてもらえたらと思います」

les Briqu’a* braque コート 121,000円
2025年10月29日(水)販売開始
販売場所:松屋銀座3階 リタズダイアリー
PHOTO/NORIKO YONEYAMA TEXT/AKIKO ICHIKAWA