ビジネスからカジュアルまで幅広いメンズアイテムが揃う「銀座の男」市。50年以上続く松屋銀座の名物催事として、“男市”の愛称で親しまれています。今回はバイヤーの巖谷(いわや)緑介さんにご登場いただき、“男市”に対する想いはもちろん、松屋銀座100周年に合わせて企画したブレザーをはじめ、スラックスやスーツなど、商品作りへのこだわりも伺いました。

お話を伺ったのは
松屋銀座
巖谷緑介さん
2018年にアパレル業界から松屋銀座に中途入社し、紳士服のセクションに配属。以来「銀座の男」市に携わり続け、2024年からはバイヤーとして、売場の構成やメーカーとの交渉、商品の企画・セレクトなど、催事の統括を任されている
価格以上の価値のある商品をお客さまへ提供するために心がけていること
――男市は、春と夏の年2回開催される、紳士服売り場の名物行事となっていますね。
年間を通じて最も規模が大きく、歴史があってたくさんのお客様から支持をいただいている催事ですので、気合が入っているといいますか、注力している催事です。通常のバイヤー業務やお取引先様と商談をする際も常に「次の男市の商品はどうするか」を考えながら半年間を過ごしているくらいです。
――「男市」が松屋銀座の名物催事となっている理由はなんだと思いますか?
歴代のバイヤーが「お客様の期待に応える、価格以上の価値を感じていただける商品」をお取引先の皆様と作り上げてきたこと。 そしてそれを支持し、毎回のように足を運んでくださったお客さまがいたからこそ、松屋銀座の名物催事となっているのだと思います。先輩方からも「お客さまの期待に応えるためにも、価格以上の価値のある商品を用意する必要がある」とずっと言われていますし、私自身もそこに対する強い想いはありますね。

――巖谷さんが商品を選ぶときに心がけていることを教えてください。
お客さまが求めているものや、松屋らしさは常に意識しています。ニーズは時代とともに変化しますが、銀座の歴史のある百貨店としてトレンド感のあるもの、流行に左右されないスタンダードなものの、両方用意することを心がけていますね。
売り場で接客しながら得たことや、ほかの社員からヒアリングしたことをもとにずっと試行錯誤してきて、今の形にたどり着きました。
今回でいえば、スーツや定番色のジャケットに加えて、クールビズでも着用できるブレザーや、スラックスを作りました。それからアクティブスーツ(ストレッチ機能や軽量化などにより動きやすく作られたスーツ)も準備しています。

――巖谷さんが思う“松屋銀座らしい紳士服”とは?
ブランド価値ではない“いいもの”を求めるお客さまが多いので、品のよさと、もののよさは意識していますね。メンズファッションの流行も意識しますけど、それだけではなくて、“本質的なよさ”をしっかりイメージしています。
“100周年だから特別”ではなく、常にいいものを出し続ける

――では、今回の「男市」での、おすすめ商品を紹介してください。
【おすすめ1】どんなシーンにもハマるベーシックなブレザーと形がきれいなスラックス

まずは、前回販売した際、「形がきれい」と好評いただいたスラックスを生地を変えてあらためて作りました。ウール100%のサラッとした肌触りで、ご自宅でも洗濯可能です。ディテールでは腰裏Vスリットを入れて、座った時の着用感などにもこだわっています。それから、このスラックスに合うジャケットを今回初めて作りました。「男市に行けばあの商品があるよね」という “男の定番品”を作りたくて企画したものです。
ネクタイはしないけれど、ジャケットを着ないといけないシーンがけっこうありますよね。このブレザーは、お仕事の場でもサラッと羽織ればそれなりにキマるし、デートのときにはTシャツの上に合わせてもいい。どんな着こなしにも合わせやすいように、あえて特徴をあまり出さないベーシックなデザインにしました。生地は尾州産のホップサック生地を使用していて、通気性と防シワ性を兼ね備えています。またスタイリングの幅が広がるように、黒に近い、ダークネイビーの色にもこだわっています。
「100周年記念ブレザー」と銘打っていますが、特別感を出すのではなく、本質的なもののよさで100周年を表現したいと思いました。毎回気合を入れて商品を作っているので、100周年に限らず、もちろん101周年も“いいもの”を作っていきます。

【おすすめ2】シルエットにとことんこだわったスーツ

松屋からシルエットやディテール等細かく指定して、インポートのウール100%でメーカーさんに作ってもらった共同企画のスーツです。一般的なジャケットよりも肩パッドを薄くして、ウエストをグッと絞っています。
今は肩パッドをあまり入れないのが全体的なトレンドですし着心地も軽くなります。パンツにはタックを入れて、裾に掛けて細くすることで、こちらもトレンド感のあるシルエットに仕上げました。松屋銀座らしく、ちょっとクラシックだけど、今の時代感も表現したスーツです。

【おすすめ3】メーカーの協力で実現したお値打ちスーツ
メーカーにご協力いただきウール100%のスーツを販売価格22000円でご用意いたしました。形は定番のもので、“通勤用に数が欲しい、でもいいものを選びたい”という方に向けています。進化したポリエステル素材が増えている一方で、「スーツといったらウール100%」と質にこだわるお客さまが松屋銀座には多いんです。吸湿性がいいウール素材は、夏でも実は涼しくて快適ですよ。



これからのメンズファッション、これからの「男市」
――今後の紳士用スーツのトレンド予想を教えてください。
アクティブスーツはまだまだ出てくると思います。それから、ウールの価格が高騰しているので、どこのメーカーさんでもこれまでのようにウール100%で手ごろな値段のスーツを作ることが難しくなりました。その影響もあって、ポリエステルの生地に付加価値を付けることが最近のトレンドですね。
――ウールの高騰によって、ポリエステルの開発が盛んになり、生地の機能が向上しているということですね。
そうです。これからはウールが入っていない生地のスーツもいろいろ出てくるでしょうし、ここのところの猛暑の影響で、洗えるスーツも主軸になってくると思います。ただ松屋銀座としては、機能性やトレンドはもちろん大切にしながら、生地や仕立てといった本質的な「良さ」にこだわって、長くご愛用していただけるような商品も用意していきたいです。

――最後に、今後の男市の展開について聞かせてください。
原価高騰が避けられないなかで、お取引先さまとも協力しながら、お客様のご期待に応えられる商品を提供していきたいですね。50年以上前から先輩方が築き上げてきた「銀座の男」市なので、これからも長く愛される催事になるように今までのお客様はもちろん、今後初めてご利用いただくお客様にも支持していただけるように努めてまいります。
「銀座の男」市

会期:2025年5月13日(火)ー19日(月)
会場:松屋銀座8階イベントスクエア
※初日午後4時開場、最終日午後5時閉場
※初日5月13日(火)は松屋の各種カード会員様限定のご入場日とさせて頂きます。
スーツやジャケット、スラックスをはじめとした春夏向けの紳士服から、ネクタイ、ベルト、シューズなどコーディネートを彩るファッション小物まで、幅広いアイテムが豊富に揃う。バイヤーが企画した男市限定商品のほか、お買い得な商品も多数ラインナップ。昨年秋からは満を持して、長年親しまれてきた「2点で31900円」の販売が復活。ビジネススタイルも、カジュアルスタイルも、ワードローブに加えたいアイテムがきっと見つかります。
PHOTO/NORIKO YONEYAMA TEXT/AKIKO ICHIKAWA