松屋銀座開店100周年の感謝の思いを花で伝えるアニバーサリーポスターが、銀座駅の地下道に設置されたポスターギャラリーにて、2025年4月29日(祝・火)ー5月13日(火)に公開されます。今回はポスターの主役となるフラワーアレンジメントを担当した、フラワーアーティストの川崎景太さんにインタビュー。制作の裏側なども見せていただきました。

INTERVIEW

フラワーアーティスト 川崎景太さん

PROFILE

1982年カリフォルニア芸術工芸大学卒。2006〜2013年にマミフラワーデザインスクールの主宰を務めた後、2014年に株式会社KTIONを立ち上げ、Keita Flower Designの中でアーティスト活動の場を広げる。大胆な空間インスタレーション・ディスプレイで、国内外の数々の賞を受賞。TV出演や著書も多数 川崎景太HP

感謝のメッセージを花々に託してポスターに

2025年5月1日(木)は、松屋銀座の100回目の開店記念日です。松屋銀座では、これまでの感謝の気持ちをお客様へお届けしたいと、その思いを花々に託してビジュアル化。8カ国をイメージしたフラワーアレンジメントにそれぞれの国の感謝を表す言葉を添えて、ポスターにしました。

フラワーアレンジメントを手がけたのは、現代のフラワーデザイン界を牽引する、フラワーアーティストの川崎景太さん。1962年に日本初のフラワーデザインスクール「マミフラワーデザインスクール」を創立したマミ川崎さんを母に持ち、展示会や空間ディスプレイ、著名人・アーティスト・企業とのコラボレーションなど、国内外で活躍されています。

今回は、4月初めに「マミフラワーデザインスクール」のスタジオで行われたポスター制作の現場へ。フラワーアレンジメントの制作や撮影の裏側などを見せていただきながら、川崎さんにお話を伺いました。

「松屋銀座さんとは、かれこれ20年以上のお付き合い。マミフラワーデザインスクールや僕自身の展覧会を行うなど、いろいろなお仕事でご一緒させていただきました。今回のポスター制作にもお声かけいただき大変嬉しく、僕から松屋さんへの感謝の気持ちも込めてお引き受けいたしました。

松屋さんからのご提案は、銀座という土地柄、世界からいろいろな方がいらっしゃるということで、8カ国を花で表現したいと。まずは、8カ国のことをいろいろと勉強することから始めました」

8つの国のイメージを固めてデザインを考案

8カ国とは「日本」「韓国」「中国」「アメリカ(イギリス)」「イタリア」「スペイン」「ドイツ」「フランス」。言語だけでなく、歴史や文化も異なる国々です。

「日頃から花には国境がないと思っていますが、例えば中国では花嫁さんが持つ花束は赤と黄色が多いなど、それぞれの国々で重んじる色や花があります。そうしたことを踏まえて、各国を代表し、文化的背景の中で慕われている色彩や花を抜粋していきました。

日本は『侘び寂び、おもてなし』、フランスは『芸術とファッション』など、自分が持つ各国のイメージをキーワード化。『パッション』をキーワードにしたスペインに情熱的な赤は欠かせないし、同系色のオレンジもあるといいなとか考えながら、キーワードを軸にデザインや表現の方向性を広げていきました。

銀座を訪れた世界中の方々がこのポスターを見たときに、『この花、僕らの国でとてもポピュラーな花だね』『私たちが好きな色を使ってくれてるね』って、少しでも感動していただけることを夢見ながら、制作を進めました」

花のメッセンジャーとして、花に寄り添い思いを伝える

8カ国をイメージしたフラワーアレンジメントには、各国それぞれ10種類前後の花材(カラーバリエーションを含む)を使用。同じ花でも色や品種が異なり、合計100種類以上におよぶ花々が使われました。

「花は四季折々に咲くものなので、実は今の時期は市場に出回らない花がたくさんありました。『陽気で楽観的』をキーワードにしたイタリアに、ひまわりは欠かせないと思ったものの、花の季節は夏。ほかにも5~6月が旬のライラックやシャクヤク、冬から春にかけて花を咲かせるクリスマスローズ…。今回はいろいろな仲卸業者の方や生産者さんに大変ご協力いただきました。温室で育てている花を分けていただいたりもしたんですよ」

そう話す川崎さんが、ひとつの国のフラワーアレンジメントにかける時間は、なんと20~30分程度。「生きている花々を、一瞬でも早く生けてあげないとかわいそうだから」と、次々と花を手に取り、驚くほどスピーディにアレンジしていきます。

おおまかな形ができあがると、遠目から見たり、カメラを通したモニター画面で確認したりしながら、全体のバランスや細部を調整。その後の撮影時間もごくわずか。「花たちの最も美しい瞬間を大切にしたい」との思いがスタジオ全体にあふれているようでした。

フラワーアレンジメントを撮影スペースに置き、最終的な微調整をしている様子

「『花のメッセンジャー』として、長年にわたって『花の心を人々に伝える』という仕事をしてきました。だからこそ、今回のような国の人間性、社会性、文化などを花に託して表現するという仕事は、僕にとってまさに天職。そう実感できて、すごく楽しく仕事をさせていただきました」

花と花が出会って生まれた感動を人々に伝えていく

最後に、川崎さんにとっての“フラワーアレンジメント”について伺ってみました。

「フラワーアレンジメントとは、花瓶に花を生けるということ。季節の異なる花々もそうですが、自然界では決して出会うことのない花と花を出会わせることができるんです。例えば、寒い場所が好きなライラックと、暖かい場所が好きな蘭。この2つの花が自然界で隣り合わせに咲くことはありませんが、花瓶になら一緒に咲かせてあげることができます。

そうすることで、蘭がライラックに『あなたいい匂いするね。わたしにはそういう香りがないの』と言うと、ライラックは蘭に『いやいや僕らには、あなたみたいな華やかさがなくて。うらやましいな』と声をかける。花と花がコミュニケーションしているような気がするんですよね。

そんな出会いの感動や楽しさを花たちが感じていてくれたなら、その感動は人にも必ず伝わるはず。だからこそ、まず花が感動してくれることを第一に考えて、その感動を人に伝えることがフラワーアレンジメントだと思っています。やはり花っていうのは、人と人とをつなぎ、感動の分かち合いをもたらしてくれる生き物なんですよね」

8カ国を表現した8つのフラワーアレンジメント

川崎さんがフラワーアレンジメントを手がけたポスターは、4月29日(祝・火)から5月13日(火)まで、地下道のポスターギャラリーをメイン会場に、館内でも展示。個々の美しさははもちろんですが、地下道にポスターが8点並んだときや、館内で数点組み合わせて展示した際にバランスよく見えるよう“集合美”も大切にしたと言います。

フラワーアレンジメントでは基本のオーバル形(楕円形)もあれば、右や左にウエイトを置いたもの、空間美を意識したものなど、国によって表現スタイルがさまざま。花の声にも耳を傾けながら、じっくりと鑑賞を。

アメリカ(イギリス)/大国らしい懐の深さと揺るぎない華やかさ

両国の国旗に使われている、赤、白、青をキーカラーにしてダリアやルピナスなどの花々を選びました。形は欧米でもよくみられるというオーバル形に。
●花材:ダリア、 ラナンキュラス・シャルロット、クリスマスローズ、ルピナス、アジサイ、スイートピーなど

ドイツ/まっすぐとのびるような力強さと自然のパワー

環境大国のドイツは自然を感じるナチュラルな雰囲気に。カンガルーポーやキングプロテアなど大地のパワーを感じるネイティブフラワーを多種使っています。
●花材:キングプロテア、カンガルーポー、リューカデンドロン、スズラン、スイセン、ユーカリなど

日本/余白に感じる日本の美意識と和の風情

品種の異なる菊や桜を使い、侘び寂びにつながる、空間の美しさ、余白の美を意識しました。金は富貴、紫は高貴さ、ピンクは日本的情緒を、色で表現。
●花材:菊、ピンポンマム、一重桜、八重桜、セッカヤナギ、キイチゴ、ナズナ、パンジーなど

中国/赤と黄色が華やぐ美しきコントラスト

中国では特別な意味を持つという赤と黄の2色を中心にアレンジ。中国で人気が高いシャクヤクは季節を先取りし、撮影時に開花タイミングを合わせて使用。
●花材:モカラ、シャクヤク、レンギョ、ドラセナ、オクラレルカ、アルケミラモリス

韓国/歴史と文化を重んじて清らかなアレジメントに

韓国で古くから好まれているという白に平和や希望のシンボルとされている青をアレンジ。サイドにユキヤナギなどの緑をあしらい、すがすがしい印象に。
●花材:デルフィニウム、ユリ、ユキヤナギ、バンダ、ビワ、 ツルバラ、 タマシダ、ピットスポラム

フランス/淡い色彩ながら華やかな存在感を放つ

色鮮やかな花は使わずに、ベージュ系やラベンダー系、白の花々、ハーブを組み合わせたアレンジ。複雑な色合いで、フランスらしい芸術力を表現しました。
●花材: バラ、ダリア、ラナンキュラス、カーネーション、ローズマリー、 バジル、ミントなど

スペイン/草花が織りなす情熱とエネルギーがみなぎる!

赤、オレンジに加え、スペインでは太陽を表すといわれる黄の3色の花々をふんだんに盛り込みました。葉先が尖ったドラセナの葉を闘牛の剣に見立てています。
●花材:エピデンドラム、アルストロメリア、 アジサイ、ビバーナム・スノーボール、 ドラセナなど

イタリア/明るく元気な色彩に情熱的な赤をプラス

イタリアの明るいイメージをヒマワリ、ウイキョウ、ミモザ・アカシアといった黄の花で表現。アクセントに愛と情熱を感じる赤のダリアをプラスしました。
●花材:ヒマワリ、ダリア、ミモザ・アカシア、ウイキョウ、ダリア、カンガルーポー、グロリオサなど

4月29日から2週間限定で、開店100周年の感謝を込めたポスターを公開します

松屋銀座開店100周年のアニバーサリーウィークとなる2025年4月29日(祝・火)ー5月13日(火)の期間限定で、フラワーアーティスト・川崎景太さんがフラワーアレンジメントを手がけたポスターが公開されます。8カ国のポスターが一堂に会すのは、東京メトロと松屋銀座をつなぐ、地下道ポスターギャラリー。川崎さんが8枚のポスターの集合美にもこだわったという美しき花々の競演をお見逃しなく!

開店 100 周年記念ポスター展示
会期:2025年4月29日(祝・火)ー5月13日(火)
会場:地下道ポスターギャラリー※松屋銀座館内にて一部展示も予定

PHOTO/NORIKO YONEYAMA TEXT/MIE NAKAMURA