5月1日(木)の松屋銀座開店記念日に合わせて、4月29日(祝・火)から5月13日(火)まで開催される「松屋銀座 開店100周年 アニバーサリーウィーク」。この期間に紳士フロアでは、人気ブランド「RAYMAR(レイマー)」と「GINZA TANIZAWA TOKYO」の松屋銀座100周年限定別注アイテムが登場します。紳士フロアの巖谷バイヤーと一緒に、限定アイテムについての秘話を2ブランドへ伺いに行きました。

まずは、巖谷バイヤーと一緒に「RAYMAR」の売り場へ

「RAYMAR」は2024年の春、巖谷さんがバイヤーに就任するとほぼ同時期に松屋銀座で常設での取引が始まった紳士靴ブランド。Eコマースをメインに展開しており、常設は松屋銀座5階の紳士靴売り場のみ。「ECや卸しが中心だからこそ、本当にいいものをコスパよくお客様にお届けされています。商売に対する考え方がRAYMAR代表の大石裕介さんとは一致していて。100周年のアウトプットを作るにあたり、僕の想いを同世代でお伝えしやすいこともあって、別注靴を作るならRAYMARさん一択だなと思いました」と巖谷さん。

今年でブランドスタートから10周年を迎える「RAYMAR」。自分たちの手で直接お客様に商品を説明しながら売る“直販スタイル”を大事にしながら、日本各地を自らの足で周ってきました。SNSの発信力も強く、イベントがあると、代表の大石さんに会いに来るファンも多いそう。「各地に気の合うおじさまたちがいらっしゃるんです(笑)」と屈託なく笑う人柄に、ファンが多いのも納得です。

「松屋銀座さんは本当に皆さん人柄がよくって。こんなフレンドリーな百貨店、ほかにないんじゃないですか。しかも東京のど真ん中・銀座で。自分たちの直販スタイルの販売を、松屋銀座さんになら安心して任せられるなと思ったんです」(大石さん)

松屋銀座の紳士売場はお取引先の販売員だけでなく、自主運営部と呼ばれる部門に所属する社員自身も店頭に立つ百貨店本来の販売形態。バイヤーが自分の目利きで集めたブランドの商品を、熱意と共にお客様へ届ける、その伝統を大石さんは貴重だと話します。

「松屋は銀座と浅草の2店舗だけなので。大手の百貨店と異なる“松屋らしさ”を大切にしながらお取引先や商品を選定しております」(巌谷さん)

100周年別注靴は、松屋銀座らしさをふんだんに詰め込んだ貴重なモデルに

巖谷さんがバイヤーになる前から「一緒に靴を作りたい」と話していたふたり。松屋銀座100周年を迎えるにあたり、いよいよ2024年の春、現実的に話がスタートしました。3カ月後の夏頃、最初にあがったサンプルを見て「特別感がなかった」と振り返る巖谷さん。

「100周年はもちろんなのですが、普通にこの先もずっと売れる“いいもの”をと最初は思っていて。保守的になっていたんですよね。ファーストサンプルは黒スエードのローファーだったのですが、ただまっすぐ“いい靴”ができた。100周年感がなくって」(巖谷さん)

「そうそう、それで“今後も売れるとか考えずに、特別なもの作りましょうよ”って言ったんです。売れなくてもいいから、松屋銀座らしいものを作りたいと思った。本当、松屋さん…と言いますか、バイヤーになったばかりの巖谷さんを応援して盛り上げたいって思っていたから。松屋銀座さんのことをいろいろと調べました」(大石さん)

最初大石さんから限定モデルとして“緑色の靴”を提案されたとき、巖谷さんは半信半疑だったそう。そこで大石さんがお客様へのアンケートから緑色に好意的な反応がある裏付けまでとり、巖谷さんを説得。「緑色の靴のサンプルがあがったとき、ああこれは素晴らしいものができた、と思いました」と巖谷さん。

「一見黒色に見えるけど、美しく深い緑色でスーツの色も選ばないんです。特別感と日常感が共存する、本当に素敵な一足になりました。RAYMARさんは、イタリアまでご自身で革の買い付けに行かれるんですが、この限定モデルも一般的に高級靴等に使われている“ミュージアムカーフ”という革を使用しています。これが5万円台で販売できるのだから素晴らしいです」(巖谷さん)

「松屋銀座さんは、横浜で呉服店・鶴屋として創業した歴史があります。だから、ウィングチップの曲線は鶴の羽。タッセルは松の葉、緑色は松の木全体の色、ソールの色は木の幹をイメージして着色しました」(大石さん)

さらに、靴の底は足を組んだ際もフォーマルで美しい姿に見えるよう、地面に触れない中心だけを黒く塗った半カラス仕上げ(全部黒色が“カラス仕上げ”と呼ばれます)。また、ソール部分には、革を薄くスライスして中を縫い、縫った上から革を閉じ糸を隠す「ヒドゥンチャネル」という技が施されています。

「ヒールの内側はスーツの裾が引っかからないようにカットされていたり(アゴカット)、側面も剥ぎのない一枚の革で仕上げてあって…話し出すときりがないですね」(巖谷さん)

「革も貴重なので、15足という限定数がある受注生産です。きっと革靴好きの方にはたまらない一足になったんじゃないかなと思います」(大石さん)

売り場を後にし、銀座の街へ。次に訪れたのは「GINZA TANIZAWA TOKYO」

もうひとつのコラボブランド「GINZA TANIZAWA TOKYO」は、明治7年創業で現存する日本最古の鞄専門店。明治時代に鞄が普及しだした際、「鞄」という字まで作ったという歴史を持つから驚きです。

現在店を守るのは、5代目の谷澤良郎さん。同族経営の老舗飲食店に勤めた後、3年前に同店へ戻ってきました。

「銀座に実店舗があるから、松屋銀座に出店する必要性はないんです。でも谷澤さんの店頭で展開されていた革職人のPOPUP展示を見に来た際に、クラッチバッグに一目ぼれして。洗練されていて本当に素敵だったから、お取引はないけど100周年別注モデルを作れないかと依頼したんです」(巖谷さん)

「百貨店とのお付き合いがなかったのですが、いいチャレンジができるきっかけを作っていただき感謝しています。銀座という街に育ててもらったブランドですし、少しでもこの機会に街に恩返しできたら」(谷澤さん)

実用性と“谷澤らしさ”を兼ね備えた別注モデルに

「フラップトートに関しては10万円を切る価格にできるよう、売場での接客の経験からお客様が必要ないと思うようなディティールは削っていただきました」とはっきり話す巖谷さん。またフラップトートは「GINZA TANIZAWA TOKYO」の既存商品にはない型。「クラシックな見た目と実用性という松屋銀座さんならではのニーズの高い時代に沿う型に、この機会だからこそ挑むことができました」と谷澤さんが言うように、実用性にもかなりこだわって作られました。

「革は兵庫の国産。軽くて、でもシボ感があるからキズがつきにくい。金具も含めてALL日本製です」(谷澤さん)

「PCがしっかり入るサイズ感になるよう高さを出したり、余分な仕切りやサイドのループをなくして価格を抑えつつシンプルな造りにし、容量を担保したので、出張時も使いやすい。あと、長時間持ちやすいようにショルダー紐も最後に付けました」(巖谷さん)

ショルダー紐は取り外しができ、またジャケットとの摩擦が減るように実用性を考えて当初の布からナイロン製に途中で変更。月に1回以上、松屋銀座からほど近い同店へ巖谷さんが足を運び、ダイレクトに職人と会話しながら理想を追求していきました。

「普通こんなダイレクトに作り手の方と話ができないので、貴重な工程でしたね。銀座に工房があるからこそできたこと。本当にレスポンスも修正も早くて。修正メールのやりとりも、100件以上にのぼりました」(巖谷さん)

「職人も、第一線のバイヤーさんと直接お話するいい機会になったと思います。今回のコラボは韓国出身の鞄職人が担当したのですが、彼は韓国のセミオーダー鞄ブランドのオーナーだったこともあり、フォロワーが多い実力者。ちょうど2024年に日本へ移住してきたんです。今回の別注モデルの実現は、彼の力も大きかったですね」(谷澤さん)

フラップトート以外の別注アイテムも見逃せません。ダレスバッグは既存品よりも内装をシンプルにし、価格を抑えると共に軽量化。「ダレスバッグのエントリーモデルとして最適だと思います」と谷澤さんは言います。また、クラッチバッグも丸い金具を使用しているのは、松屋別注モデルの特徴です。

そして、「松屋銀座にお越しいただく方は女性も多いので」と、巖谷さんからのリクエストで作った巾着もラインナップ。女性が斜め掛けできるよう、紐を長くオーダーできるのも特徴です。

谷澤さん曰く、「営業さんは金具もシルバーが多い」そうで、この別注モデルたちはなんと革は14色、金具はシルバーとゴールドからお客様が選んでオーダーできる贅沢仕様。きっと自分の好みにぴったりの鞄がオーダーできるはず。

「僕らと同世代の30代半ばの方々に、ぜひ手に取っていただきたいですね。なぜかというと、いま買えば、お手入れしだいで定年まで使えるから。革の上質さやその事実を、ぜひ気軽なモデルで知って欲しいなと思います」(谷澤さん)

「松屋銀座としては、歴史あるブランドリーダーと一緒に100周年コラボができるので、この取り組みをきっかけに双方で新たなお客様と出会えたら嬉しいです」(巖谷さん)

本記事には書ききれないほど、各限定モデルの魅力はまだまだ奥深いもの。ぜひ「松屋銀座 開店100周年 アニバーサリーウィーク」へ訪れて、実物を手に取ってみてください。きっと自分の暮らしに取り入れたくなること間違いなしです。

ご紹介したアイテムは「松屋銀座 開店100周年 アニバーサリーウィーク」で発売

4月29日(祝・火)から開催される「松屋銀座 開店100周年 アニバーサリーウィーク」。5階の紳士靴売場にて展開される「RAYMAR」別注モデル(15足限定、受注生産)と「GINZA TANIZAWA TOKYO」別注4アイテム(受注生産)は、4月29日(祝・火)から5月6日(火)にて受注受付です。ぜひご注目ください。

PHOTO/RYUMON KAGIOKA TEXT/MOE KUMADA