さまざまな“〇〇のプロ”が登場し、銀座の名店をナビゲートするこちらの企画。今回は、パンの研究所「パンラボ」を主宰するパンライターの池田浩明さんが、銀座ならではのパンをご紹介。伝統あるものと新しいものが共存するこの街らしいベーカリーをご案内します。
Vol.2 池田浩明さんのパン案内

NAVIGATOR
パンラボ
主宰
池田浩明さん
プロフィール
「パンラボ」主宰、パンライター。日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」理事長。『パン欲』(世界文化社)、日本全国 このパンがすごい!(朝日新聞出版)、『パンのトリセツ』(誠文堂新光社)など編著書多数。Xアカウント:@ikedahiloaki。
“銀座”の印象やおすすめの歩き方は?

パン屋さんが、銀座の個性を写し出す
パン屋さんは街に合わせて営まれるもの。流行の発信地である渋谷や新宿では若者好みのパンが多かったり、下北沢などの住宅街では日常的なパンが意識されていたりと、街の個性が反映されます。銀座といえば、大人が集う街。インバウンドの方々も多く、明治から続く「銀座木村家」さんもある場所です。だから銀座には、日本の素材や製法にこだわった高級路線のパン屋さんが多い。また歴史を感じる昔ながらのパンに出会えるのもこの街の特徴です。
銀座パンは専門店のみにあらず!
銀座では、パン屋さん以外の飲食店にもおいしいパンが潜んでいます。とんかつ店や洋食店の贅沢なカツサンド、パティスリーのクロワッサンやクイニーアマン。自家製パンをお酒とともに楽しめる「バー ブルーモルフォ」や小粋なサンドイッチとハイボールの名店「ロックフィッシュ」など、おいしいパンと出会えるバーもいろいろ。さまざまなシーンに出没するパンを探して銀座を巡るのも楽しいですよ。

国産小麦と自家製発酵種の風味豊かなパンを百貨店で



ベーカリー「アンデルセン」グループが広島県で運営する「アンデルセン芸北100年農場」。畑の開墾から小麦栽培、製粉、製パンまでを体験する研修施設だ。その活動で育まれたコンセプト「土づくりから食卓まで」を体現したのがこちら。旬の食材を取り入れた日本の食事に合う国産小麦のパンを提案し、自家製発酵種を使った食事パンも充実している。芸北 100 年農場のライ麦で起こした種と自社農場のリンゴ果汁を使う銀座サワードゥは、酸味が強すぎず日本の甘辛い料理にも合うと好評。松屋銀座の開店記念日に合わせて、この生地を使ったドーナツも登場予定なのでお楽しみに。


『品質を安定させるのが難しい国産小麦や自家製発酵種のパン作りを、業界の常識を飛び越え、百貨店内で実現させた画期的なお店。自社農場産リンゴ・グラニースミスで仕込む銀座サワードゥは強い焼目の皮の香ばしさとカルバドスのような熟成感ある香り、リンゴのキャラメリゼのような甘みがあり、シャルキュトリーやチーズにも合いそう。それらが手に入れやすいのもデパ地下ベーカリーの利点ですね』(池田さん)
DATA

ブレッドストーリー松屋銀座店
住所/東京都中央区銀座3-6-1松屋銀座B1食品
電話番号/03(6867)1177
営業時間/午前11:00〜午後8:00 日・連休最終日〜午後7:30
定休日/松屋銀座店休日に準ずる
交通アクセス/東京メトロ銀座線「銀座駅」より徒歩1分
素材と製法の追求で支持を集める高級食パン店



2013年に誕生した食パン専門店。ここから始まったとも言われる高級食パンブームが落ち着いた今も変わらず行列ができる人気だ。その秘密は、素材と製法の追求にある。いちばん人気の角食パンは、北海道産小麦・ゆめちからときたほなみをブレンド。もちもち感を引きだす湯種製法と、口溶けのよさを出す液種製法を併用し、美瑛の自社農場産のフレッシュな脱脂乳で仕込んで甘み豊かに。北米産小麦を使う軽やかなプルマンと、トーストでサクサク感が楽しめる山食・イギリスもあり、併設レストランでそれぞれの個性を活かしたメニューも味わえる。


『母体はバゲットの名店「VIRON」。その並外れた製パン技術やブランディングの巧みさで、高級食パンブームの起点となりました。湯種液種製法と長時間熟成により、副材料よりも小麦の甘みや香ばしさが際立ちます。イチオシは角食パン。北海道産小麦・ゆめちからのもちもち感がありつつソフトで口溶けがいい。耳の香ばしさも絶品で、併設カフェのサンドウィッチには切り落としたパンの耳がついてくるほど』(池田さん)
DATA

セントル ザ・ベーカリー 銀座店
電話番号/03(3562)1016
住所/東京都中央区銀座1-2-1東京高速道路紺屋ビル1F
営業時間/午前10:00〜午後7:00※売り切れしだい終了 レストラン午前9:00〜
定休日/1月1日 ※レストランは火
交通アクセス/東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」より徒歩1分
昭和の趣豊かなコロッケパンで郷愁に浸る



下町の風情が残る東銀座で昭和2(1927)年から続く惣菜店。名物のコロッケは、洋食店で修行した創業者のレシピを今も忠実に継承し、材料はジャガイモ、玉ねぎ、牛豚の合挽肉、塩コショウのみ。有機栽培の男爵イモを全国から厳選し、冷めてもパサつかないよう水分を残してふかしている。ラード100%で揚げるから香ばしく、サクサクが長続き。ハムカツ、メンチ、豚カツも揃い、コッペパンか食パンを選んでサンドイッチにしてもらえる。ほかに具材のないシンプルなサンドイッチを頬張れば、懐かしさで胸いっぱいに。
『昔ながらの惣菜店の店先でどんどん揚げられていくコロッケやカツ。注文するとパンにはさんでソースをかけて、レトロな包装紙に包んでくれる。湯気とともに立ちのぼるラードやソースの香り、包装紙の懐かしい匂い…。そんな“心象風景調味料”の演出効果も相まって、もうすばらしくおいしい。こういうお店は今や希少だし、コロッケもカツもいつも揚げたて新鮮。22世紀も残ってほしいお店です』(池田さん)


DATA

チョウシ屋
電話番号/03(3541)2982
住所/東京都中央区銀座3-11-6
営業時間/午前11:00~午後2:00、午後4:00~午後6:00 ※売り切れしだい終了
定休日/土~月・祝
交通アクセス/東京メトロ日比谷線「東銀座駅」より徒歩2分
PHOTO/AYUMI OSAKI, NORIKO YONEYAMA TEXT/MIYO YOSHINAGA