松屋銀座開店100周年記念企画のラストを飾る展覧展「DMで辿るデザインギャラリー 1964~2026」が、2026年2月18日(水)―4月13日(月)に開催。1964年から現在に至るまで、デザインギャラリーで開催された企画展のDM(ダイレクトメール)が一堂に展示されます。今回は、日本デザインコミッティーの事務局長を務める土田真理子さんに、展覧会のことはもちろん、松屋銀座とデザインコミッティーのつながり、そして、これからについても語っていただきました。
日本デザインコミッティー
「グッドデザインの啓蒙」を理念とし、1953年に発足。建築家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、美術家、評論家など多彩なメンバーで構成されたデザイナーの集団。松屋銀座と協働し、松屋銀座7階にある「デザインギャラリー1953」での展示企画をはじめ、「デザインコレクション」で販売する優れたプロダクトの選定などを行う。現在のメンバーは32名、生活に根ざしたデザインの価値を発信し続けている。

お話をお伺いしたのは
日本デザインコミッティー事務局長
土田真理子さん
一般企業を退職後、テキスタイルデザインを学び直す。その後、アパレルメーカーでテキスタイル制作に携わる。1988年、日本デザインコミッティー事務局長に就任。長年にわたり日本デザインコミッティーの活動全般を支え、多分野の専門家に寄り添いながら、企画・広報・記録を一貫して担当。「デザインギャラリー1953」での展覧会やイベントの運営にも携わる。雑誌やウェブなどを通じて、デザインの思想と実践、伝統工芸の魅力などを発信する活動も行っている。
70年以上にわたってグッドデザイン活動を続けてきた
松屋銀座と日本デザインコミッティー

――まずは、デザインコミッティーが百貨店である松屋銀座と協働することになった経緯から聞かせてください。
1950年にイタリア政府からミラノ・トリエンナーレの招待を受けたことをきっかけに、当時第一線で活躍していた、デザイナー、芸術家、建築家、評論家たちがギュっと結束したんです。そういう人たちにとって、分野を横断した環境での情報交換はとても有意義な時間だったのでしょうね。彼らは『例の会』と呼んで、1ヶ月に1回、それぞれの事務所や自宅を持ち回りで会合場所にしていたらしいです。メンバーには、インダストリアルデザイナーの柳宗理、グラフィックデザイナーの亀倉雄策、プロダクトデザイナーの渡辺力、建築家の丹下健三、インテリアデザイナーの剣持勇、デザイン評論家の浜口隆一、芸術家の岡本太郎などがいました。

――日本のデザイン、芸術界を牽引してきた錚々たるメンバーですね。
そうなんです。そのうち彼らの間で、“活動の拠点が欲しい”という話が出始めたときに、デザインコミッティーメンバーのひとりである浜口ミホ氏が台所用品の銘品を集めた展示販売会を松屋銀座で開催したんですね。その評判がとてもよく、“1回で終わらせるのはもったいない、売り場としてまとめていこう”となったそうです。松屋銀座がデザインコミッティーに場所を提供する形で、1953年に『デザインセクション』と名付けた売り場が誕生しました。それが現在の『デザインコレクション』の前身ですね。
その後、1964年に、“良いデザインを社会に伝える展示空間”として「デザインギャラリー1953」を開設。その2つができたことで、松屋銀座とデザインコミッティーの協働関係が深まっていきました。


800通のDMから時代とデザインの変遷を読み解く
松屋銀座100周年を記念した企画展
――ダイレクトメールに焦点を当てた今回の展覧会「DMで辿るデザインギャラリー 1964~2026」は、どんな意図から企画されたのでしょうか?
“松屋銀座100周年記念の総括のようなことをやりましょう”ということで、たどり着いた企画です。『デザインギャラリー1953』で積み重ねてきたものを紹介することで、デザインコミッティーのことを語れるし、松屋銀座と一緒にやってきたことを伝えられますよね。
いろいろ話し合いを重ねた結果、“800枚のDMが会場にびっしり並ぶのは壮観だよね”という流れになりました。それぞれのDMには、その当時の世の中のことやデザインの流れが反映されていて、おもしろいと思います。DMの裏側に書かれているデザインコミッティーメンバーの推薦文もお伝えしたいので、表と裏の両面、合わせて約1600枚のDMが展示されます。


――土田さんがこれまで関わられた数多くの企画展のなかで、特に印象に残っているものを教えてください。
約800回もあるので選ぶのも難しいですが、3つピックアップしてみました。
●第4回「あかり」1964年8月14日―9月2日
彫刻家であるイサム・ノグチのデザインによる『AKARI』は、和紙と竹ひごでつくられた光の彫刻シリーズです。日本で初めてのお披露目が『デザインギャラリー1953』だったそうです。この企画を担当したのは丹下健三ですね。当時はデザイナーや建築家の交流が盛んで、さまざまな活動を通して知り合いになったようで、イサム・ノグチもそのなかの1人だったと聞きます。



●646回 毎日デザイン賞特別賞受賞記念展「松屋とグッドデザイン、その運動と日本デザインコミッティー」2008年5月14日―6月9日
松屋銀座が日本デザインコミッティーとともにグッドデザインの普及・啓蒙活動を続けてきたことが評価されて、2007年に『毎日デザイン賞特別賞』を受賞したんです。それを記念した展覧会ですね。『デザインコレクション』のことを中心に、どういう商品でどういう宣伝をしたのかを編集してまとめました。この展覧会のタイトルは、私と永井一正さんが考えたんですよ。『コックと泥棒、その妻と愛人』というイギリス映画のタイトルをもじったんです。

●第647回 オリベデザインセンター飛驒家具プロジェクト 6人のデザイナーがつくる「自分で使う家具」2008年7月16日―8月11日
当時のデザインコミッティーの理事長だったデザイナーの川上元美さんといろいろ相談する中で、『“地場産業×デザイナー”の展覧会ができるといいね』という話になったんです。川上さんは、いろいろな地域や産業と組んで仕事をされていて、その中で、飛騨高山が取り上げられたんですよ。デザインコミッティーのメンバー6人(原研哉、岩崎信治、川上元美、松永真、面出薫、佐藤卓)それぞれの“こういうものを作りたい”というリクエストに、岐阜県のオリベデザインセンター(現:岐阜県産業経済振興センター内の組織)と、飛騨高山の家具メーカー3社が協力を受けて開発して、『自分で使いたい家具』として展示販売したんです。いくつかの家具は、7階の『デザインコレクション』で販売していますよ。自分の作ったものが商品になって、消費者の元に届くことは、デザイナーにとって最高の喜びじゃないですか、このプロジェクトはまさにそうだったと思いますよ。私も一緒に現地に行きましたけど、すごくおもしろかったです。
デザインの未来を担う新しい力を発掘したい
その願いを込めて設立した「DESIGN GALLERY AWARD」

――「デザインギャラリー1953」での展示企画を公募する「DESIGN GALLERY AWARD」を新しく始められるとのことですね。そのお話も聞かせてください。
『デザインギャラリー1953』のポテンシャルを上げようということで、公募企画を一般のクリエイターや企業などの方たちに向けて発信するものが『DESIGN GALLERY AWARD』です。 “展覧会に仕立てる”というところが非常に特徴的で、2026年を初回として、今後、毎年継続していく予定です。
1年に1回、松屋銀座とデザインコミッティーに注目が集まるこの機会として、たくさんの方々に応募していただきたいですし、若い世代の方々にも注目していただきたいです。
また、その素晴らしい企画をカタチにして展覧会を行うことが、ギャラリーの魅力の底上げになると思います。ギャラリーが持つ力を2倍にも3倍にも、10倍にもなるよう、願っています。
――日本のデザイン界をリードしているコミッティーメンバーの方々に、応募したデザインの企画を審査してもらえる貴重な機会ですね。
これはすごいことです。“デザインの未来を担う”と言うと、ちょっと大げさですが、“デザインの視座を考える”ということにつながるんじゃないかなと思います。
私はこれまで400回以上の展覧会に関わってきたんですけど、やはり見応えのある展覧会は、何も言わなくても良さが伝わるんですよ。だから応募してくださる方たちは、ぜひ、そういうプランを出してほしい。展覧会は見たときの印象が重要なので、“深掘りしなくても見た瞬間に伝わる何か”を求めています。それこそダイヤモンドはキラキラ光っていて、見た瞬間に“美しい!”と思う。そういう企画が集まるといいですね。
将来的には、クリエイターの方々に目指される、また、無視できないアワードへと大きく育っていくといいなと思っています。
――ありがとうございます。最後に、「デザインギャラリー1953」と「デザインコレクション」を訪れるお客様へメッセージをお願いします。
デザインって、実際の生活の中で使ってみないとわからない。だから、深掘りする生活者になってもらいたいなと思います。ものの見方や使い方を自分の中で消化しながら、生活の糧にする、そういう視点で商品を選んでもらえたらいいですね。
デザイナーたちはグッドデザインのために一生懸命に貢献しているので、お客様には“このデザインはどういうところがいいんだろう?”ということを考え、デザインの使い手のプロになっていただけたらうれしいです。

第797回デザインギャラリー1953企画展
「DMで辿るデザインギャラリー 1964~2026 それぞれの時代を表明するデザインコミッティーの活動歴、そしてその先へ」
会期:2026年2月18日(水)―4月13日(月)
※営業日・営業時間の詳細は松屋ウェブサイトをご覧ください。
※最終日午後5時閉場 入場無料
会場:松屋銀座7階 デザインギャラリー1953
主催:日本デザインコミッティー
展覧会担当:粟辻美早、川上元美/協力:AWATSUJI design
DESIGN GALLERY AWARD
デザインの思想・領域・品質を未来志向で前進させるための展覧会企画を公募。応募企画の中から優秀なものを年間2点選び、「Design Gallery Award」として賞および賞金を授与し、「デザインギャラリー1953」での展示機会を提供する。
応募期間:2026年2月18日(水)―7月3日(金)
副賞:賞金50万円、「デザインギャラリー1953」での約2カ月間の企画展示権利
主催:日本デザインコミッティー
PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI TEXT/AKIKO ICHIKAWA
















