銀座で営みを続ける「名店の若旦那・若女将」にナビゲーターとして登場していただき、銀座の街の魅力から長年紡いできたお店の歴史をインタビュー。若旦那・若女将がつながるお店・場所などもお聞きしたので、銀座街歩きも楽しんでみたい。第5回は、初代の味を守りながら、時代に即した新しい挑戦を試みる「銀座ピエス・モンテ」の2代目・下村昌輝さんと妹の沙織さんにお話をお伺いします。

旦那

銀座ピエス・モンテ
2代目
下村昌輝さん

PROFILE

1985年東京生まれ。大学時代に父・下村信司さんが営む「銀座ピエス・モンテ」でアルバイトを始め、パティシエの道へ。2018年に代表取締役に就任。2025年より、4歳下の妹の沙織さんが接客担当として加わり、現在は兄妹でお店を切り盛りしている

洋菓子激戦区で揺るぎない支持を集める伝説の洋菓子店

美食家の間で“銀座の嗜好品”として定着

銀座の高級クラブ街としても歴史を刻む、銀座8丁目の並木通り。この華やかなエリアの一画にあるのが洋菓子店「銀座ピエス・モンテ」です。お店自体の歴史は38年ほどですが、ルーツとなる初代・下村信司氏が手掛けた高級洋菓子店「エルドール」から2代目の昌輝さんに至るまで、50年以上もここ銀座で愛される洋菓子を作り続けてきました。

満州で生まれ山口県で育った初代の信司氏です。大学卒業後にサラリーマンとして働いていましたが、菓子好きが高じて、24歳で菓子職人として修行の道へ。ヨーロッパ各地の洋菓子店を巡るなどして、独学で菓子作りを学んだそう。

1971(昭和49)年からは、銀座6丁目にあった高級洋菓子の名店「エルドール」を創業しました。同ビルがテナントビルへと方針変更するのをきっかけに独立し、1987(昭和62)年、銀座8丁目の並木通り沿いに「銀座ピエス・モンテ」をオープン。

「商売人の子は商売人。職人の子は職人。お前にはサラリーマンは勤まらないよ。そういう遺伝子なんだ」が父の口癖だったと、語る2代目の下村昌輝さん。食べることが好きで、さまざまな飲食店での経験を経て、2008年に「銀座ピエス・モンテ」のパティシエに就任、2018年に2代目として代表取締役を任されました。

また、昨年には、中・高・大学と母校が一緒の気の合う妹が「兄を支えたい」との思いから、渉外担当に就任。4歳下の妹・下村沙織さんは、パティシエである職人肌の兄に代わって、店舗の接客、町内会などの営業活動を精力的に行い、新しい風を呼び込んでいます。

極上の素材と手間ひまかけたお菓子づくり

お店に入ると目に入るのはずらりと並ぶ、「おいしければ売れる」という初代の信念を継承した洋菓子の数々です。定番から季節限定商品まで、20種類以上の彩り鮮やかなケーキがずらり。ホールケーキの豊富さも特徴のひとつです。

製菓に使用するのは、マーガリンは一切使用せずバターを使うなど、厳選した良質な素材のみ。既成のパウダー類は使わず、職人の手作業にこだわった洋菓子を提供することで、舌の肥えた銀座のゲストを魅了し続けています。

「上質な素材を最大限に活かすため、手間ひまを惜しまずお菓子作りに日々向き合っています。妥協せず、良質な商品を提供し続けることで、お客様との信頼関係を築けているのだと実感しています」(昌輝さん)

創業者の思いが詰まったシュークリームとエクレア

菓子箱の組み立て作業など、幼少期より家業のお店のお手伝いをしていたという下村兄妹。昌輝さんのおすすめは、お店の人気商品、「シュー ア ラ クレーム」です。「カスタードクリームをおいしく味わうこと、がコンセプトのため、皮は薄くやわらか。シンプルな組み合わせだからこそ、ダイレクトに素材の味を楽しむことできるんです。大きな鍋で焦げ付かないように混ぜ続けながら、強火で一気に炊き上げることで滑らかでおいしいクリームが完成します」(昌輝さん)

大学の4年間、欠かさず毎日、接客のアルバイトをしていたという沙織さんのお気に入りは、「エクレール ショコラ」。「濃厚ショコラクリームと生クリームを贅沢に使った、唯一無二のエクレア。生クリームには上質な洋酒が入った、大人風味のリッチな味わいです」(沙織さん)

クーベルチュール使用のチョコレートケーキも人気

エクレアやケーキに使用するチョコレートクリームには、クーベルチュールチョコレートを使用。「豊かなカカオの風味となめらかな口どけが特徴です。うちのケーキは甘さもしっかり楽しめるように仕上げています」(昌輝さん)

「ショコラ フレーズ」は、チョコレートスポンジの上に、チョコレートクリームとイチゴをデコレーションした贅沢なケーキ。

「しっとり口どけのよいスポンジケーキとチョコレートクリームに、高級バーで提供されるブランデーとリキュールを加えてあるので、豊な風味と甘味、ほどよい酸味が感じられます」(昌輝さん)

このほか、一度は味わいたい看板メニューに「アップルパイ」があります。昌輝さんのパイ生地へのこだわりは強く、キッチンにはパイ生地専用の部屋が用意されているほど。気温によって味が左右されるため、10度に設定された部屋の中でつくられるからこそ、サクサク食感の「アップルパイ」に仕上がるのだそう。

「アップルパイは例年、8月下旬頃から11月上旬頃までは、アップルパイに適したりんごが入手できないため休止。代わりに期間限定でマロンパイを提供しています」(沙織さん)

冷凍ケーキなど新しい試みにも挑戦

2011年には、“銀座の夜の街”を象徴とした黒×金カラーの店内を、ベージュ×オレンジをメインとした優しい色合いの空間にリニューアル。女性客が気軽に入れるお店へとイメージチェンジをしました。

「父から兄に代替わりして、昼と夜のお客さまが半々になりました。リニューアルをきっかけに、贈答品としてセット売りしていなかった焼き菓子のバラ売りや、オンラインショップにも注力し始めました」(沙織さん)

松屋銀座の地下2階の冷凍食品コーナー「ギンザフローズングルメ」では、冷凍の「チーズケーキ」も展開。「お店と同じクオリティのものを提供できるよう試行錯誤を重ねました。これを機にお店に来てくださるお客様もいてありがたいです」(昌輝さん)

若旦那・下村昌輝さんとつながる銀座さんぽ

「個人店が主導する街づくりによって、美しい景観が保たれているのが銀座の魅力。伝統と流行が調和した街並みは歩いているだけでも楽しいです。老舗の中華料理店や路地裏のとんかつ屋、ブランド洋食器店、精肉店など、グルメから買い物まで幅広い用途を満たしてくれます」(昌輝さん)

和牛のおいしさを実感できる「銀座吉澤」

100周年の2024年7月に、創業の地に移転。東京都知事認可の仲卸でもあり、1階は血統・飼育法にこだわった雌牛のみを一頭仕入れする精肉店、2階はすき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキの肉処、3階には檜のカウンターで味わう肉割烹を併設しています。

「ランチのおすすめは、とろけるようなまろやかさと濃厚なうま味が楽しめるすき焼き鍋御膳。群馬の正田醤油を使ったオリジナルの割り下と抜群で、ごはんが進みます。会社のバーベキュー用や自宅用に精肉もこちらで購入しています」

〈肉専門店〉銀座吉澤

TEL.(精肉店)03(3542)2983、(飲食店)03(3542)2981
住所/東京都中央区銀座1-20-8吉澤銀座1丁目ビル
営業時間/(精肉店)午前10時~午後6時、(肉処)ランチ午前11時~午後3時(2時) ディナー午後5時~午後10時(L.O.午後9時)
定休日/日・祝日
アクセス/東銀座駅より徒歩9分
銀座吉澤HP

オリジナルティある中華料理に出会える「羽衣」

日本人の味覚に合った「日本の中華料理」を提供する、1969年創業の老舗。茹で、蒸し、焼き、揚げから選べる餃子をはじめ、酢豚やエビチリなどメニューは100種類以上。広々とした店内には個室もあるので、接待や会食などさまざまなシーンで利用ができます。

「中華料理が食べたいって思ったときに理想的な1軒。ランチでも夜の宴会でも重宝しています。必ず頼むのが、具材たっぷりでパラパラ食感がやみつきになるチャーハンと、エビが惜しげもなく入ったロングロング春巻き。お土産にもできる中華ちまきもおすすめです」

干しエビ、シイタケ、塩漬け卵、ゴロっと入った豚の角煮など食感が楽しい、ちまき1個750円
エビやニラが入った長さ約30cmのロングロング春巻き750円
平日ランチは、曜日ごとに3種類のセットメニュー1,100円~を用意

〈中華〉味の中華 羽衣 銀座本店

TEL 03(3542)8560
住所/東京都中央区銀座7-12-14大栄会館B1F
営業時間/ランチ午前11時ー午後3時(L.O.午後2時30分)ディナー午後5時ー午後10時(L.O.午後9時30分)
定休日/日・祝
アクセス/銀座駅より徒歩5分
味の中華 羽衣 銀座本店HP

今回訪ねた老舗

銀座ピエス・モンテ

TEL.03(3574)0960
住所/東京都中央区銀座8-6-22銀座ピアースビル1F
営業時間/12時ー午後11時(午後4時ー午後5時30分は昼休み)、土午後1時ー午後7時
定休日/日・祝
アクセス/新橋駅より徒歩3分、銀座駅より徒歩10分
銀座ピエス・モンテHP

INFORMATION_松屋銀座のギンザ フローズン グルメ

松屋銀座の地下2階にある冷凍食品コーナーでは、銀座の名店の味をおうちで楽しめる 「ギンザ フローズン グルメ」を展開。<銀座ピエス・モンテ>からは人気の「チーズケーキ」を販売中。バニラビーンズの風味が豊かな、濃厚で口どけの良い焼チーズケーキをお楽しみください。

商品名:<銀座ピエス・モンテ>チーズケーキ 4,212円 内容量:350g
販売場所:松屋銀座 地下2階ギンザ フローズン グルメ

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PHOTO/KAZUHITO MIURA、YUKO CHIBA TEXT/NAOMI TERAKAWA