自然との調和を大切にするライフスタイルブランド「ヨーガンレール」と「ババグーリ」。松屋銀座では2025年11月5日(水)から18日(火)にかけて、4階の「ヨーガンレール」店舗、4階イベントスペース、7階の「ババグーリ」店舗、「デザインギャラリー1953」、「THE HOME」の5カ所にて、松屋銀座開店100周年にちなんだ特別な合同企画を開催。ブランド名「ババグーリ」の元となった貴重な瑪瑙(メノウ)コレクションの展示をはじめ、瑪瑙を使ったアクセサリーや8種類の新作スカーフを先行販売。開催に先立ち、両ブランドのデザイナーであり代表取締役も務める松浦秀昭さんにお話を伺いました。

ヨーガンレール/ババグーリ

「ヨーガンレール」は、ドイツ出身のデザイナー、ヨーガン・レール氏によって1972年に設立されたブランド。「土に還るものづくり」を信条に、天然素材と手仕事にこだわり、流行に左右されない美しい日常着を提案。「ババグーリ」は暮らしの中で自らが使いたいものをかたちにするブランドとして2006年にスタートしたライフスタイルブランド。服に加え、キッチンウェア、生活雑貨、家具など、日常を彩るアイテムを展開している。

お話をお伺いしたのは

ヨーガンレール(JURGEN LEHL)/ババグーリ(Babaghuri)
デザイナー

松浦秀昭さん

「ヨーガンレール」と「ババグーリ」の創業者ヨーガン・レール氏の思想と美意識を深く理解し、40年以上に渡ってブランドの世界観を支える。ヨーガン・レール氏が亡くなった2014年以降、その精神を継承し、デザイナー兼代表取締役としてブランドの哲学を守りながら会社を牽引。独自の視点、アイデアとともにブランドの世界観を表現し続けている。

松屋銀座100周年をきっかけに生まれた2ブランド合同ポップアップ企画

――松屋銀座から今回の企画のお誘いがあった際、どんな印象を持たれましたか?

「銀座って、第二次世界大戦の前からカラフルでキラキラと輝いていて、すごくいい時代を作っていたんですよね。僕はその時代のことを本で読んで勝手に想像しているんですが。当時、銀座に遊びに来た人は、流行の最先端である松屋銀座に寄って、いろんなものを物色して帰ることが多かったそうです。それが100年も続いて、今もがんばっていらっしゃる。だから松屋銀座は特殊なデパートだと思いますし、今回の企画に参加できたのは光栄ですね」

――企画はどのように進めていったのでしょうか。

「アイデアがまとまるのは早かったですね。松屋銀座さんから『松屋銀座開店100周年企画を行ってほしい』と言われて“何ができるかな?”と考えたんです。いい機会だから、7階では『ババグーリ』というブランドのネーミングの由来になった石を見せることになりました。同時に、ババグーリの石を使った指輪やネックレスを販売することにして。4階では、スカーフを販売するとおもしろいねって、割とすっと話が決まりました」

ヨーガン・レール氏自身が拾い集めた貴重な瑪瑙の展示とアクセサリー制作

――ブランド名の元になったババグーリ(瑪瑙)について教えてください。

「ババグーリは、瑪瑙(メノウ)の石を表すインドの言葉。ヨーガンは何十回もインドに通っていたんですけど、そこらじゅうで石を拾うんです(笑)。滞在先のヨーガンが慕っていた高齢の女主人が『あそこに行くと瑪瑙が見つかるよ』と、インド・グジャラート地方の小さな村、ラタンプールの河原を教えてくれたんです。

それ以来、ヨーガンはそこを気に入り、インドへ行くたびに最後の3日~4日はフリータイムを取り、毎日ラタンプールの河原に行って拾っていました。それで、毎回ナイロンのボストンバッグに30~40kgの瑪瑙を入れて持ち帰っていました。それを20年以上も続けていたので、想像を超える量の瑪瑙を収集していました」

――ヨーガン・レール氏は瑪瑙に魅せられたんですね。すごい熱量です。

「彼は僕の師匠で、本当に尊敬しているんです。感覚的にすごい人で、その目利きは素晴らしかった。僕も一緒にラタンプールの河原に行ったことがあるんですが、その場所は石だらけで、すぐにはきれいな瑪瑙が見つかるようなものではないんです。『何で見つかるの?』とヨーガンに聞くと、『向こうから目に入ってくる』って言うんですよ。僕は意味がわからないんだけど(笑)、探しに歩くよりも、じーっと見ていると瑪瑙のほうから目に入ってくるんだって話してました」

――今回のイベントでは、ヨーガン・レール氏が収集した貴重な瑪瑙のコレクションをアクセサリーに仕立てて販売しますね。

「そうなんです。当初から、ヨーガンとジュエリーデザイナーが一つひとつ石を見て、共同でデザインを考えていました。リング、ネックレスのほかに、ピアスパーツやヘアゴムもあります。同じ石がないからすべて一点ものですね」

四角いスカーフをキャンバスに見立ててアイデアを膨らませた“シカーフ”

――ヨーガンレールとババグーリで新しく制作したスカーフのお話を聞かせてください。

「松屋銀座さんの開店100周年の機会に、“四角”に特化したスカーフを作ることにしました。今までにも四角いスカーフは作っていましたが、そんなに意識はしていなかったんですね。“四角で何ができるかチャレンジしよう”ということを決めて、“シカーフ”っていう名前を付けたら、また新たにイメージがワーっと湧いてきちゃって(笑)。

四角いスカーフを1枚のキャンバスに見立てて絵を描くように、刺繍だったり、織りだったり、プリントだったり、我々が得意としている技術をいっぱい盛り込みました。ヨーガンレールとババグーリにとっても、いいきっかけになったなと思います」

――ヨーガンレールのスカーフが6種類、ババグーリのスカーフが2種類、いろいろなデザインの“シカーフ”を見ることができるんですね。

「全部で8パターンのデザインがあって、それぞれにいろんな色があります。ヨーガンレールとババグーリの店舗では、来年の春くらいから新作として売り出します。11月の松屋銀座さんのイベントでは、全部を一堂に見せて先行販売します。いろいろなシカーフが並んだら、アートギャラリーみたいだと思いますよ。

同じものをずっと売り続けるのではなく、色を変えたり、新しく追加したり、常に活性化させていき、 “松屋銀座に行くといつもおもしろいシカーフがある”というふうに計画しています。その為のアイデアはまだまだたくさんあります」

ヨーガン・レールの意思を継ぎながら新しいことに挑戦していく

――2014年にヨーガン・レール氏が亡くなられてから今年で11年。ブランドのものづくり哲学はどのように継承されているのでしょうか。

「僕が30歳のとき、36歳のヨーガンと出会って、それからヨーガンが70歳で亡くなるまで34年間ずっと一緒に仕事してきました。ヨーガンが生地を作って、僕は服のデザインをしてバッグも靴も作って、少ない人数のスタッフで会社を運営していました。ヨーガンに直接仕込まれて影響を受けたスタッフが、会社には何人もいますので、会社がバラバラになる事はありませんでした。

僕は、ヨーガンがいなくなった感覚はないし、方向性を失って迷ったボートみたいな気持ちもありません。彼がどこかで見ていてくれるから、ブランドをしっかり守りつつ、少し新しいことに挑戦しようという意識を常に持っています。

うちのブランドは伝統的な細かい手仕事をよく取り入れていますが、最近は、その職人さんたちの技術がどんどん失われつつあるのも事実です。今回のスカーフ制作もそうですが、僕たちはなるべく手仕事の職人たちと仕事が出来るように、伝統の技術を守っていきたいと思っています」

――最後に、今回の企画を楽しみにしているお客様にメッセージをお願いします。

「瑪瑙を知っているけど、見たことがない人もいらっしゃると思うので、今回しっかり見てほしいです。『ババグーリ』とは何か、ヨーガンは何をしてきたのか、簡単なストーリーも添える予定です。それを読みながら楽しんでもらえればと思います。“ヨーガンの神髄に触れられる小さなギャラリー”というコンセプトなので、ぜひぜひ足を運んでください。

4階で販売するシカーフは、ヨーガンが亡くなってから、ヨーガンの名に恥じないように僕たちががんばって制作しています。これから僕たちが取り組んでいく新しい世界なので、こちらもぜひご覧ください」

ヨーガンレール・ババグーリ デザインの軌跡とその先に広がる世界

会期:2025年11月5日(水)ー18日(火)
会場:松屋銀座4階ヨーガンレール、4階イベントスペース、7階ババグーリ、デザインギャラリー1953、THE HOME

PHOTO/HIKARI TABUCHI TEXT/AKIKO ICHIKAWA