さまざまな“〇〇のプロ”が登場し、銀座の名店をナビゲートするこちらの企画。今回は、デザインの領域のみならず、商業施設や駅ナカのショッププロデュース、地方活性化のためのリブランディンなど多方面でセンスを生かしている塚本太朗さんがPCケースや筆記用具などのデスク回りの雑貨に出合えるお店をご案内します。

Vol.4 塚本太朗さんの雑貨案内

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クリエイティブ
ディレクター
塚本太朗さん

プロフィール

THE CONRAN SHOP退社後、リドルデザインバンクを設立。商業施設のショッププロデュースをはじめ、地方活性化のための商品企画からトータルディレクションをする傍ら、ドイツとオーストリアから買い付けたオンラインショップ「マルクト」の運営など多方面で活躍。著書に「マルクト」(プチグラ)、「ウィーントラベルブック」(東京地図出版)など
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Instagram:@tarocomputer

“銀座”の印象やおすすめの歩き方は?

自分の“好き”が集まっていてまるで街全体がセレクトショップのよう

ステーショナリー、インテリア雑貨、小物……など雑貨とひとことで言ってもその守備範囲はあまりにも広い。その一通りが揃うのが銀座です。

「僕は仕事の延長で雑貨を見るのが好きで、人とはかぶらない個性豊かなものからトレンド、匠の技が利いたものといろんなジャンルを見ます。なかでも銀座は、トレンドをいち早く取り入れたものや海外のスタイリッシュなデザインなどもある一方で、万人受けする王道、そして匠の技が利いたものと、いろんなジャンルを取り揃っている印象です」(塚本さん)

商品がコミュニケーションツールとなってブランドストーリーを知る雑貨めぐり

「商業施設の中だけでなく、小さいけど路面店をめぐるのも結構楽しい。そしてそれぞれのブランドのコンセプトがとてもしっかりしていて、それを通してスタッフさんとの交流しながら、モノを見る・買うだけでなく、そのものの裏側を知るのも面白いんですよね。

商品がただの商品ではなく、コミュニケーションツールになって、ますますそのブランドの商品が好きになります。こうして、商品を媒介としてその裏側や作り手の思いに触れながら、雑貨めぐりをするのがおすすめです」(塚本さん)

今回は特別に、塚本さんのお気に入りの私物たちも見せていただきました。FREITAGのPC用スリーブケースやスマホケース、大小さまざまなポーチはペンケース、ガジェットケースなどに利用。ボールペンはビジュアルに一目ぼれしたカランダッシュのもの、打ち合わせのメモには月光荘のスケッチブックを常備しているそう。銀座で出合えるこれらのブランドにもそれぞれストーリーを聞きながら3店舗をめぐってきました。

修理してでも使い続けたい唯一無二のデスク回りのアイテム

スイス発のバッグブランド「FREITAG(フライターグ)」。トラックの幌やシートベルトなどをリサイクルして、全ての製品を人の手で丁寧に仕上げていくスタイル。象徴的なアイテムはメッセンジャーバッグです。使わなくなったトラックの幌をきれいに洗浄して使える部分のみ裁断してデザインするため、色や柄の組み合わせが一つひとつ異なるのが特徴で、幌の折り目やロゴかかすれた部分などが味となっています。

「このブランドに出会ったのは実はまだ日本のショップがないときで、ドイツでした。引き寄せられるようにふらっと入ったお店で、思わず見入ってしまって数時間いたほど。その時買ったバッグがご縁で、自分が運営していた雑貨店にもFREITAGのバッグを置くようになりました」(塚本さん)

塚本さん自身も好きで、しかもなにかとご縁があるブランドとなり、気づけば次々といろんなアイテムを買っていたのだそう。

「ほかにほしいバッグがないんですよ。FREITAGの色やデザインといい、機能性といい、ほしいものがすべて形になっています。例えばトートバッグがショルダーにできたり、バックパックの背面側にポケットがあったりとデザインと機能性を見事に両立させています。だからどんどんアイテムも増えていき、バッグは長いもので20年以上使っているものもあるし、底の部分の色が退色してしまったので、リペアして使っていてとても愛着があります」(塚本さん)

丈夫でかっこいいPCケースは持っているだけテンションが上がる

「デスク回りのアイテムでいえば、僕のお気に入りはPCを入れるスリーブケースで、20年以上使っています。留め金をくるくるっと回す封筒型ものもで。AppleのMacBook Airが出たとき、スティーブ・ジョブズ氏が同じスタイルのケースから商品を取り出したことからヒントを得て商品になったもの。持っているだけでかっこいいからテンションが上がります。

これを買ったら次はガジェットケースにするポーチやスマートフォンのケースが欲しくなって。お店にいくたびに買っちゃうんです。色といいデザインといいそして丈夫で長持ちで機能的」(塚本さん)

DATA

FREITAG Store TOKYO GINZA
電話番号/03(6228)6142
住所/東京都中央区銀座1-13-12 銀友ビル1,2階
営業時間/午前11:00~午後7:00 金・土午前11:00 ~午後8:00
定休日/なし
アクセス/東京メトロ「銀座一丁目駅」10出口よりすぐ

スイスの鉛筆メーカーが手掛ける、スタイリッシュな筆記具

今年で創業110周年を迎えたスイスの高級筆記用具&画材メーカーのカランダッシュ。前身は鉛筆工場だったことから、六角形のボディの万年筆やボールペンが多いのも特徴のひとつです。

「仕事でスイスに行ったときに現地のお店で見つけたボールペンは、廃盤になってしまいましたが今も使っています。シンプルだけどデザインがおしゃれ。お店に入って一目ぼれして買いました」(塚本さん)

洗練され筆記具の美しいデザインに魅了

「カランダッシュの筆記具のデザインは本当に美しいんです。細身のボディに、人間工学に基づいて持ちやすさを追求していてまさに機能美を見事に形にしています。その象徴的なアイテムが、いまではブランドのアイコン的存在にもなっている849のシリーズ。ボディの色の発色がきれいだし、缶に入って売られているものもあるのでギフトにもぴったりです」(塚本さん)

銀座の店舗では、1階が筆記用具、2階が画材道具で、店内にはカランダッシュの画材を使って描かれた作品の個展も随時開催。また銀座店とオンラインショップ限定のものや、人気のシリーズのラインナップも豊富に揃います。

DATA

カランダッシュ 銀座 ブティック

電話番号/03(3561)1915
住所/東京都中央区銀座2-5-2
営業時間/午前11:00〜午後7:00
定休日/なし
アクセス/東京メトロ「銀座1丁目駅」よりすぐ

職人さんによって考え抜いて作られた秀逸な雑貨が集結

 1917年に創業した画材店「月光荘」。その名は創業者の橋本兵蔵さんと交流のあった歌人の与謝野鉄幹さんが名付け親で、フランスのヴェルレーヌの詩から引用したもの。そしてお店の入口のある看板の文字「月光荘」は与謝野晶子さんの直筆の書体なのだそう。

月光荘といえば画家だけでなく、美大生、趣味で絵を描いている人を魅了するオリジナルの絵具が有名ですが、それ以外にも絵を描くことから派生したアイテムが揃います。

「僕が運営にかかわっていた雑貨店に月光荘のスケッチブックを扱わせていただいたのが月光荘さんとの最初の接点でした。僕は絵を描くわけではないのですが、当時からサイズや紙の厚みなどを選べる月光荘オリジナルのスケッチブックを気に入り、打ち合わせなどのメモに使っています。

サイズは一番小さい 0F サイズのウスという薄い紙のもの。罫線や点線などがないまっしろな紙でさらさらと書きやすいし、打ち合わせのときにアイディアをささっと書いて、ぺりぺりっと破って相手も渡すこともでき、とても便利。使い終わるとまとめて収納するその佇まいもおしゃれなんです」(塚本さん)

スケッチブック以外のオリジナル文具も充実。月光荘の代表的な商品のひとつである8Bの鉛筆のさらさら~とした書き心地は唯一無二。デッサンだけでなく、楽譜を書くときに使ったり、裁縫するときのチャコペン替わりにする人もいるそう。また隠れた人気商品ユーモアカードは「感謝のお手玉 胸いっぱい」などメッセージ入りでユニーク。それぞれに創業者の「人に喜ばれるものを作りたい」という思いが息づいています。

DATA

月光荘画材店

電話番号/03(3572)5605
住所/ 東京都中央区銀座 8-7-2 永寿ビル 1 階・B1
営業時間/午前 11:00~午後 6:00 土・日・祝 午前
11:00~午後 5:00
定休日/年中無休
交通アクセス/東京メトロ「銀座駅」A1 出口より徒歩
8 分

PHOTO/KATSUMI SATO TEXT/MIE MINEZAWA